コロナ禍で変わる環境からくるストレスによる「うつ」に打ち勝つ!


新型コロナウイルスの感染が拡大する中、「どうも仕事や家事に手がつかない」「将来のことを考えると不安で気分が落ち込んでしまう」などのお悩みを持つ方が増えています。ネットやテレビなどのメディアでは、「コロナうつ」などという言葉で取り上げられることも多くなりました。今回は、コロナ禍で話題になることが多くなってきた「うつ」に関する対処法について説明します。

「コロナうつ」と「うつ病」


コロナ禍で、在宅勤務になったり、外出を控えたりと生活環境が大きく変わったことで、ストレスを感じている方も多いのではないかと思います。
そんなコロナ禍で聞かれるようになってきた「コロナうつ」とは、メディアなどがつけた言葉で、正式に医学的に定義されたものではありませんが、一般的には、コロナ禍の影響での先行きが見えない自粛生活や感染への不安、将来への不安などから、抑うつ状態になったり、心身に不調が現れる状態のことをさしています。
一時的に気分が落ち込んだとしても、抑うつ状態が長く続くことは通常ありませんし、一時的にそのような状況になることは多くの人に起こることです。しかし、それが2週間以上にわたって続き、仕事に行けなくなったなど日常生活に支障がでたり、普段の生活に変化が現れた場合は、「うつ病」などの発症が疑われるので注意が必要です。また元々、うつ病をはじめとした精神疾患を患っている人は、コロナ禍によって症状が悪化しやすくなったといわれていますし、長引く自粛生活で再発も危惧されます。

そもそもうつ病ってどんな病気?


うつ病は、単なる気分の落ち込み(気持ちの持ちよう)ではありません。いくつかの要因が重なり合って、脳の神経伝達物質のバランスが崩れ、うまく働かなくなる状態です。これによって心身のエネルギーが低下し、憂うつな気分やさまざまな意欲の低下といった心理的症状や、眠れない、疲れやすいなどさまざまな身体的な症状が続きます。
また、国民の100人に約6人が経験する、多くの人に発症する可能性がある心の病気で、服薬が必要だったり、進行すると治療に時間がかかることもあるので、できるだけ早く気づいて対処することが大切です。なお、うつ病にかかるのは、女性の方が男性よりも1.6倍程度多いということです。
厚生労働省『みんなのメンタルヘルス総合サイト』
うつ病は、発症原因によって分けると以下の3つのタイプがありますが、その正確な原因はよくわかっていません。

  1. 外因性
    認知症、神経変性疾患や脳血管障害、脳腫瘍など脳の症状、甲状腺機能低下、肝臓病など身体の症状に起因するもの。

  2. 心因性
    ストレスや精神的な負担が原因で発症すると考えられ、不安障害や強迫性障害、適応障害などが含まれ、複数の症状が同時に現れることも。特定の大きなストレスに対して発症する場合は、反応性抑うつと呼ばれることがあり、今回の「コロナうつ」などは、この心因性にカテゴライズされると考えてもいいかもしれません。

  3. 内因性
    典型的なうつ病。外因性、心因性のどちらでもなく、遺伝や体質的、性格傾向などに起因するもの。ストレスが発症の引き金になることもあるので、心因性との区別は難しい。


うつ病は、几帳面で生真面目、責任感が強い人、完全主義者がかかりやすいといわれています。このような人はストレスを受けやすいので、それをきっかけにうつ病を発症しやすいと考えられているのですが、前述したとおりその原因は正確にはわかっておらず、単純なものではないと考えられています。また、外因性のうつ病のように、身体的な病気が原因になることもあります。
では、うつ病の早期発見のための初期症状はどんなものでしょうか?
うつ病の典型的な初期症状というのはわかりにくいのですが、
■憂うつ感:常に不安感を抱え、悲観的になる
■興味・関心の低下:今まで好きだったことも含め、何に対しても興味がわかず、やる気が出ない
■身体の不調:食欲や性欲の低下や不眠・過眠、倦怠感を常に感じる

のような状態が長く(2週間以上)続いていることなどは、自分で気づきやすい症状の例です。
本人ではなく、周囲が気づく変化としては、以前と比べて表情が暗く、体調不良の訴えが多くなったり、仕事や家事の能率が低下しミスが増える、周囲との交流を避けるようになるなどは、うつ病を疑うサインといえます。
以上を読んで心当たりがある場合は、一般社団法人日本うつ病センターのサイトにセルフチェックのページがあるので、ぜひチェックしてみてください。

うつ病が疑われたら


「うつ病かも」と思ったら、早めに医師や保健師などの専門家に相談、受診してください。相談しづらい、話すことがわからないなどと思うかもしれませんが、気を楽に日常の困っていることを伝えるようにしてください。病院やクリニックに行くのであれば、精神科、神経科、心療内科がおすすめですが、まずは他科のかかりつけ医でもよいので、早めに相談することが大切です。
ご家族など周囲の方も、いつもと違う状態が長く続いたら、本人の話を聞いて受診を促すようにしてください。治療が始まったら、周囲からどう思われているか気にするケースも多いので、過度に反応せず温かく見守ってあげることが肝心です。必要以上に気を使ったり、励ましたりも逆にプレッシャーとなります。本人の回復のペースに合わせて支援をしてあげてください。

うつ病予防のためにできること




  • 規則正しい生活をしましょう
    コロナ禍での自粛生活や在宅勤務などによって、生活のリズムが崩れがちになっているかもしれません。起床時間や就寝時間を決めて、十分な睡眠時間をとって、できるだけ一定のリズムで生活することを心がけましょう。

  • 適度な運動をしましょう
    適度な運動は心身の健康に良い影響を与えます。室内でストレッチを行ったり、散歩をしたり、できる範囲で無理せず体を動かしてみましょう。

  • 休養をとってバランスの取れた食事を心がけましょう
    健康の維持は何をするにも基本となります。体調がすぐれないときは休養をとって、バランスの取れた食事を心がけてください。

  • ネットやSNS、テレビなどのメディアに振り回されない
    新型コロナウイルスに関しては、メディアからのネガティブな情報ばかりを気にして悲観してしまうことがあります。不確かな情報も多いので、きちんと情報を取捨選択したり、コロナ情報を見ない日をつくるなど、時間を制限するのも良いかもしれません。

  • ストレスとなっている要因を減らす
    抱えている問題があれば、優先順位をつけたり、避けられるものは思い切って避けてみたり、自分の手に余るのであれば誰かに相談するなりして、整理してみましょう。
    在宅勤務などで周りとのコミュニケーションが少なくなったことが、ストレスになっている場合もあります。友人とオンラインで話したり、無理のない程度にコミュニケーションをとりましょう。
    また、たとえ自分にとって喜ばしいことであっても、生活に大きな変化があるとストレスがかかります。大きな変化があったときは、意識して無理せずマイペースを保ちましょう。


うつ病は、早期に適切な治療を行えば必ず治る病気です。必要以上に構えず、早めに相談・受診することが大切です。

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