白血病を克服し世界の舞台に/クリスチャン・リアリーファノ選手インタビュー


昨年日本で開催されたラグビーワールドカップ(RWC)。
日本代表の活躍をはじめ、世界最高峰の熱戦に胸を躍らせた人も多いことでしょう。
その強豪チームのひとつであるオーストラリア代表で活躍したクリスチャン・リアリーファノ選手が2019−2020シーズンからNTTコミュニケーションズシャイニングアークスでプレーをしている。
リアリーファノ選手は2016年、白血病に罹患したが、見事に病を克服してRWCの舞台に立った。
病から立ち上がり、さまざまな経験を経て、トップアスリートとして活躍する秘訣を今回は伺いたいと思います。

戦うときは決して一人ではない


NTTコミュニケーションズシャイニングアークス
クリスチャン・リアリーファノ選手/インタビュー

――昨年は日本でRWCが行われ、オーストラリア代表として活躍されましたね。
クリスチャン・リアリーファノ選手(以下CL) 日本でRWCが開催されたことは本当に良かったと思っています。もちろん私自身、日本で、しかもRWCの舞台でプレーできたこと自体が素晴らしい経験だったのですが、大会を運営するスタッフの方々や、なにより私たちを歓迎してくれた日本のファンの皆さんの対応が素晴らしかったです。また、今回の大会によって、ラグビーを知らない日本の方々にもラグビーに興味を持ってもらえたと聞きます。そんな点からも大成功した大会だったと思いますし、私も大変うれしく思います。
――なぜ日本のトップリーグのチームに所属することになったのでしょうか。
CL まず、私は日本のチームに所属するのは3チーム目なんです。シャイニングアークスの前は、豊田自動織機シャトルズ。最初は2016年にサントリーサンゴリアスに加入しました。
もともと日本に興味があったうえに、日本ラグビーのトップリーグはレベルが高いと聞いていたので、新しいチャレンジの場としてふさわしいと思いました。当時私がオーストラリアで所属していたチームの先輩選手がサンゴリアスでプレーしていたのが縁で、とてもいいチームだと聞き、サンゴリアスを選びました。それが、日本のチームに所属するそもそものきっかけですね。しかし、残念ながらその年に病気が発覚してサンゴリアスでプレーすることはかないませんでした。病気からの復帰時はサンゴリアスとのタイミングが合わず、シャトルズに加入。その後、2019年からシャイニングアークスに加入することになりました。
――病気というのは、血液のがんといわれる白血病ですね。診断された時の心境は?
CL まさか自分がそんな病気になるなんて思ってもいませんでした。当時、シーズンを前にいつものようにトレーニングをしていたのですが、どうも調子が上がらない、これまでのような成果がでないと感じ、不思議に思っていたのです。そこで、念のためにと検査をしてもらったところ、白血病だとわかったのです。私がアスリートで体調の変化に敏感だったことが早期発見につながったので、そういう意味では、幸運だったかもしれません。それでも、白血病と診断された時はとても大きな衝撃を受けました。

――そこからどのように病を克服し、RWCの代表にまで復活できたのですか。
CL 最初は衝撃を受けましたが、すぐにポジティブに考えるよう切り替えました。そして、自分の病気について情報を集め、学びました。治療にあたっては、医師のほか理学療法士や看護師など病気の専門家がたくさんいますが、そういった方々ときちんと話し合い、相談しながら自分に一番合った治療法を探していきました。
――復活までの過程で支えになったことは?
CL さまざまな病気や困難を克服した方々の言葉を参考にしましたね。中でも、悪性リンパ腫に打ち克ったトップアスリートの経験談は特に参考になりました。
とはいえ、ラグビーに関しては、ワラビーズ(ラグビー・オーストラリア代表の愛称)どころか、プロでプレーすることも、最初はまったく考えていませんでした。地元のクラブチームでプレーができたらいいな、といった程度です。ちょうどその頃私には小さな子どもがいたので、その子のために、まずは父親として生きようと、そのことを一番に考えました。家族にとって、私は必要な人間です。だから生きなければならないと。
他にも、私の病気のことを知ると、日本を含め多くの国のラグビーファンからあたたかい言葉をたくさんいただきました。そういったサポートが、私にとても勇気を与えてくれました。
そうやって多くの人たちのサポートを受けながら一歩一歩前進し、回復に至りました。その成果がRWCでのプレーだったと思います。決して私一人だけで達成したことではありません。
――今の体調やチームの状況はどうですか。
CL 現在も定期検診は行っていますが、その間隔も以前に比べ長くなっており、体調的には問題ありません。絶好調です。
シャイニングアークスはトップリーグでも若いチームで、これからまだまだ成長するはずです。ラグビーは15人で戦うチームスポーツ。私もそのうちの一人として貢献していきたいと思っています。
――最後に、現在病気に苦しむ人へのメッセージがあればお願いします。
CL まずはポジティブになることです。そして、決して一人で抱え込まず周りの人々を信頼してサポートを受けましょう。
また、先ほど私自身の治療経験もお話ししましたが、世界には難病を克服した人がたくさんいます。私もその一人です。そんな治療の旅を終えた経験者の話をよく聞いてほしいと思います。
さらに、私たちはチーム(シャイニングアークス)としても、がん治療研究を応援する「deleteC」プロジェクト(下記コラム参照)に参画しており、私個人としてもこの活動に参加できることを光栄に思っています。このように、サポートしてくれる人はたくさんいます。あなたは一人ではありません。前を向いて、共に戦いましょう!

Christian Lealifano
(クリスチャン・リアリーファノ)
ポジション:スタンドオフ、センター
生年月日:1987年9月24日
身長:179cm
体重:95kg
出身:ニュージーランド・オークランド
オーストラリア代表キャップ数:26
オーストラリアのプロチームでプレーの後、2016年サントリーサンゴリアスに加入直後白血病と診断される。
2018年豊田自動織機シャトルズに加入。
2019年RWC出場(ベスト8)。
2019年よりNTTコミュニケーションズシャイニングアークス所属。
▶ シャイニングアークス・サイトの選手紹介ページ
ここに注目

みんなの力で
がんを治せる病気にするプロジェクト


シャイニングアークスは、2019年秋から始まったがんの治療研究に貢献する「deleteC(デリート・シー)」プロジェクトにスポーツ界から初めて参画しました。
誰もが参加できて、みんなでがんの治療研究を応援していける仕組みをつくり、「がんを治せる病気にする日」を1日でも早く手繰り寄せることを目的としたプロジェクトが「deleteC」です。具体的には、企業や団体がそれぞれのロゴや商品から、Cancer( がん)の頭文字である「C」の文字を消したオリジナル商品やサービスを開発、販売。その売り上げの一部をがんの治療研究に寄付するというもの。
シャイニングアークスでは、チームロゴにある文字の中から「C」の文字を消したピンク色のトレーニングジャージーを作成し着用(本ページの1枚目、2枚目の写真でも着用)。他にオリジナル・グッズの制作、販売、募金活動を行うといった取り組みを進めています。グッズの詳細については下記サイトをご覧ください。
▶ www.shiningarcs.com/goods

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