いまさら聞けないキャッシュレスの基礎知識


最近、何かと話題になる「キャッシュレス決済」。テレビやコンビニ店頭などでもポイント還元や加入サービスの派手なコマーシャルが目につきます。消費税増税への対応策としてもキャッシュレスでの決済が優遇されるということもあり、キャッシュレスの利用は今後一段と進むと言われています。とはいえ今まで現金の生活に慣れていた人にとっては、わからないことも多いかもしれません。キャッシュレスの波に乗り遅れないため、まずはキャッシュレスの基礎知識をおさらいしておきましょう。
 

消費税増税でキャッシュレス時代が本格的にスタートします


経済産業省では、消費税が10%に引き上げられることにともなって消費者の負担軽減を目的とし、2019年10月1日から「キャッシュレス・消費者還元事業」が始まりました(2020年6月30日まで)。これは中小企業の店舗に限られますが、キャッシュレス決済を利用するたびに、2~5%のポイントを政府が負担してカード会社やスマホ決済事業者を通して消費者に還元する仕組みです*1
仮に2%が還元されるとすると、1万円の買い物で200円、10万円なら2000円戻ってくる勘定になるので、1回1回の買い物ではお得感は感じないかもしれませんが、期間(2019年10月1日~2020年6月30日)を通して考えれば、現金で支払う場合とキャッシュレスで決済する場合とでは、大きな差が生じます。
また、コンビニをはじめ様々な店舗で、スマホ決済の使える看板やステッカーが目につくと思いますが、スマホ決済事業者各社がそれぞれ高還元の加入キャンペーンなども行っているので、「官」と「民」が揃って消費者向けのポイント還元サービスを大々的に導入することになります。まさにこの秋こそがキャッシュレス時代の本格的な幕開けといえましょう。
*1 付与されるポイントの種類は決済したサービスによって決まります。
 

キャッシュレス生活のメリットと注意点とは?


一口にキャッシュレスといっても、クレジットカード、デビットカード、電子マネー、スマホ決済など様々なサービスがあります。既にクレジットカードによる支払いや、Suicaなどの電子マネーは慣れ親しんだものかと思いますが、QRコード・バーコード決済といった最新のスマホアプリの決済サービスとなると、数多くの事業者が参入していて、どのサービスを選んでいいのか、その内容はどう違うのか、なかなか難しい問題かもしれません。そこで今回は、キャッシュレス生活を始めるにあたって、そのメリット、デメリットを整理しながら、代表的なサービスの特長を、順を追って挙げてみたいと思います(続編として、スマホ決済に焦点を絞った記事の掲載も予定しています)。
〇キャッシュレスサービスのメリット
キャッシュレスサービス導入の主なメリットとしては、次のような点が挙げられます。
1 現金を持ち歩かずに、スムーズに決済できる。レジで財布を取りだしたり、小銭を数えたり、おつりをもらったりという時間が省かれ、また現金を引き出すためにATMに並ぶ必要もありません。
2 ポイント還元がお得。先述した国の「キャッシュレス・消費者還元事業」をはじめ、各スマホ決済事業者によっては決済に利用した金額に応じてポイントが還元され、ポイントは別の支払いに利用できるので、現金払いより圧倒的にお得。事業者ごとにキャンペーンやクーポンがあるのも魅力です。
3 お金の管理がしやすい。キャッシュレスはコンピュータを介して決済が行われるので利用履歴が残り、後からすぐに確認できるので、日々の支出を把握するのに便利です。光熱費や通信費などの固定費をキャッシュレス決済でまとめることで、家計の管理もしやすく、ポイント還元がある場合であればお得にもなるので、一石二鳥です。
〇キャッシュレスサービスのデメリット
また、注意しなければならないデメリットもあります。
1 無駄使いしやすい。現金のやり取りが無いだけにお金を使っている感覚が薄れ、つい使いすぎないよう、気をつける必要があります。
2 使える店舗が限定される。キャッシュレス化が進んでいるとはいえ、まだまだキャッシュレス決済を導入していない店舗があるので、事前に確認しておいた方がいいでしょう。
また特に役所などの公共のサービスでは使えないケースがまだまだ多いのが実情です。
3 スマホの充電を忘れずに。スマホ決済の場合は充電が切れていると使用ができないので、常に充電には気を使っておきましょう。
 

使い方は色々。キャッシュレス決済の種類と特長は?


キャッシュレス決済にはどういう種類があって、またそれぞれのサービスにはどういう特長があるのでしょうか?
〇カード決済(クレジットカード、デビットカード)

  • クレジットカード
    キャッシュレス決済の定番ともいえる決済方法で、専用の端末(カードリーダー)で情報を読み取り、保有者の信用によって、ポストペイ(後払い)式で商品購入などの決済が可能です。インターネット上でカード情報を打ち込んでオンライン決済も可能。古くからある一般的な決済方法ですので、既に日常的に使われている方も多いと思います。

  • デビットカード
    金融機関(一般的に銀行)が発行、預金口座と紐づけられていて、決済後すぐに口座から引き落とされるリアルタイムペイ(即時払い)式で、現金に近い感覚で利用できます。ポストペイ式のクレジットカードとは異なり、預金残高分しか使えませんので、使いすぎることが無いのがメリットです。

〇電子マネー
電子マネーの定義はあいまいですが、一般的には、ICカード(やスマホ)を店舗や駅の改札にある専用端末にかざして決済(タッチ決済/コンタクトレス決済/非接触決済)できるものをいいます。クレジットカードのようにカードを専用端末に挿入して暗証番号を打ち込んだりすることなく、カードを専用端末にかざすだけで決済が完了するため、スピーディーな支払いが可能で、急いでいるときには大変便利です*2。利用金額の上限が比較的低めに設定されているなど、不正利用のリスク等の面から少額利用を前提としています。
交通系の「Suica」「PASMO」などや、流通系の「nanaco」「WAON」などプリペイド(前払い)式のものがほとんどですが、「iD」、「QUICPay」のようにクレジットカードと紐づけてポストペイ式として利用できるものもあります。
「Apple Pay」「Google Pay」は、複数の電子マネーやクレジットカードをスマホで管理できる機能で、登録した電子マネーやクレジットカードを選択してスマホを専用端末にかざせば決済ができるサービスです。
*2 日本ではまだあまり普及していませんが、タッチ決済可能なクレジットカードもあります。
〇コード決済(QRコード・バーコード決済)
店頭に置かれたQRコードをスマホの専用アプリで読み取ったり、専用アプリでQRコードやバーコードを表示させて店舗の専用端末で読み取ったりして決済する方法。IT事業者が運営する「楽天ペイ」「LINE Pay」「Origami Pay」などや、通信キャリア系の「PayPay」「d払い」などのほか、「ゆうちょPay」といった銀行系のものまで多くの種類があります。
スマホひとつでスピーディーな決済が可能なうえに、支出管理も簡単にできるのが特長です。
店舗側も、決済端末を用意しなくても、その店舗用に印字されたQRコードがあれば対応可能なうえ、個人情報も記録されないため情報漏洩のリスクも負わずに導入できるので、個人経営の店舗においても導入が進んでいます。
「Line Pay」などは個人間の送金に対応しているので、飲み会などの割り勘などにも便利です。「d払い」はコード決済にもオンライン決済にも対応していて、ドコモの回線を契約している方であれば、貯まったポイントをケータイ料金の支払いに充てることもできます。
 

国民総キャッシュレス化の時代がやってくる!?



キャッシュレスはスマホの普及とともに今や世界中で利用が拡大していて、決済比率は、韓国の96.4%を筆頭にイギリスの68.6%、中国の65.8%、アメリカ46.0%と高い値となっています。日本は19.9%と少々出遅れているのが現状です(2016年時点。出典:一般社団法人キャッシュレス推進協議会「キャッシュレス・ロードマップ2019」)。
しかしながら、海外では広く普及しているため、2020年の東京オリンピック、2025年の大阪・関西万博などのインバウンド対応は喫緊の課題で、少子高齢化による人手不足対策も踏まえ、政府としても2025年までにキャッシュレス決済比率を40%、将来的には世界最高水準の80%をめざすことを発表しています(出典:経済産業省「キャッシュレス・ビジョン」平成30年4月)。
キャッシュレス決済は、まさに国を挙げて推進する国策ともいえるので、今後さらに普及、拡大していくことになるのは間違いありません。来るべき「国民総キャッシュレス化」に上手にシフトチェンジできるように、現状にプラスして自分なりに使いやすそうなキャッシュレス決済を取り入れて、ポイント還元もある今、さらなるキャッシュレス化を進めてみてはいかがでしょうか
※本記事ではキャッシュレス決済の基礎知識をまとめましたが、その続編として、スマホ決済に焦点を絞った記事の掲載を予定しています。

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