その日その日の地道な一歩と感謝の気持ちを大きな結果につなげる


2017年12月の「福岡国際マラソン」に参加したNTT西日本陸上競技部の竹ノ内佳樹選手が、日本人3位となり2020年東京五輪のマラソン選手を選考する「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」への参加資格を獲得しました。
竹ノ内選手にとっては、マラソン挑戦わずか2度目での好記録。
マラソン界の大先輩でもある清水監督とともに、今後が期待される若手ランナーの竹ノ内選手にお話を伺いました。
――昨年の「福岡国際マラソン」での好成績によって、「マラソングランドチャンピオンシップ」(下記コラム参照)への参加資格が得られましたね
竹ノ内選手 率直に言ってとてもうれしいです。もっと言えばビックリという感じです(笑)。レース前は(2時間)11分台ではいけるかなという感覚がありましたが、それ以上だったので。
清水監督 練習はしっかりできていましたし、彼にとってはまだフルマラソン2回目ですからね。1回目より3分もタイムを縮めていますし、十分良い結果だったと思います。実は、練習を見ている段階で、うまくいけば10 分を切れるのではと期待していました。とはいえ、やはりマラソンには経験も必要ですからね。これから経験を増やして、もっと良い記録を出していければと思っています。あとは、今のまま練習をしっかり続けていくことですね。
竹ノ内選手 監督の練習メニューは無理なものではないので、もちろん軽いわけではなくそれなりにしんどいわけですが、丁寧にやっていくことを意識してやっています。僕はマラソン経験がなかったので、なにをどう練習すればよいかなんて考えられない。でも、監督は“サブ10”(サブテン:フルマラソンで2時間10分を切ること)を4回も出しているすごい人です(サブ10・4回は日本人5位タイ)。「わからないことはわかる人に聞く」のが一番ですから、監督が決めたことをやっていればきっと伸びるだろうと信頼しています。
竹ノ内佳樹選手竹ノ内佳樹選手

――次の目標は? 来年の五輪も視野に入っていますか?
竹ノ内選手 次の目標としては、もちろんサブ10がありますが、それよりも経験を増やしていきたいと考えています。マラソンは長丁場ですので、ちょっとした体調の変化でも何が起こるか分かりません。レースで得たさまざまな経験を積み上げていくことが大事で、今はタイムよりむしろそちらの方が重要だと思っています。なんといっても、マラソンは1回走るとダメージが大きく、トップレベルのレースは人生でも数えるほどしか走れない競技ですからね。一つひとつ課題をクリアしていって、その結果として日の丸をつけられたらうれしいですが、それだけでなく、マラソンをとおして自分の価値を高めていきたいと思っています。
清水監督 結果をどう出すかは、それまでの過程の一つひとつが大事です。彼は練習好きで、自分から率先してやっていくタイプ。彼に関しては、練習をしっかりやれなど厳しく言ったこともないんですよ。決められたメニューを淡々とやりますから。
清水康次監督清水康次監督

竹ノ内選手 自分ではまだ甘いと思いますけどね。ただ、監督の言われたとおりにやるだけです。
――竹ノ内選手はどうしてNTTに? やはり清水監督がいらしたからですか?
竹ノ内選手 もちろんそれもありますが、僕は出身が大阪なんですけれど、高校時代に陸上部の練習で長居公園の長距離走路を走っている際に、ときどきNTTの選手たちを見かけたんです。その選手たちがすごくかっこよくて……。入るならNTTという気持ちを高校生のころからもっていました。まだマラソンをするようになるとまでは考えていませんでしたが。マラソンをするきっかけは、監督から急に「マラソンやろうよ」と言われたことです(笑)。
清水監督 マラソンは、陸上をやっていれば誰でも走れるという競技ではないですからね。でも、練習に取り組む姿勢を見て、彼ならばいけると、マラソンを勧めました。
――そういう意味でもNTTでの2人の出会いが、素晴らしい結果を生みましたね。
竹ノ内選手 僕らが陸上競技をしていられるのは、やっぱり会社をはじめ、周りの皆さんのサポートのおかげですので、本当に感謝しています。一日が終わるときにはいつも「今日もいい練習ができた。ありがたいな」と思います。
清水監督 私からも、いつも感謝の気持ちを忘れないようにと、指導しています。私自身も、監督としての現在はもちろん、選手時代も周囲に助けられましたから。我々としては、結果を出すことがその感謝の気持ちを表すことになります。そのためにこれからも頑張っていきますので、今後とも応援よろしくお願いします。
竹ノ内選手 よろしくお願いします!

マラソングランドチャンピオンシップ


「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」とは、東京五輪のマラソン代表選考会として2019年9月15日(日)に開催される予定のレースのこと。
日本代表は3名ですが、同レースでの優勝者1名および、一定の条件をクリアした1名が代表の内定となります(残りの1名は、その後の「MGCファイナルチャレンジ」で一定の条件をクリアした競技者が選ばれます。いない場合は再度MGCの結果により選定されます)。
MGCに参加するためには、まず「MGCシリーズ」と名づけられた2017年から2019年にかけて行われる特定の5大会で一定の成績を収めなければなりませんが、竹ノ内選手は2017年12月3日に行われた「福岡国際マラソン」で2時間10分1秒を記録、日本人3位となり、早々とその参加資格を得ることができました。
MGCまではまだ十分に時間があるなか、すでに参加資格を得たことは、精神的に余裕をもって調整をしていける分、アドバンテージになるのではないでしょうか。今後の竹ノ内選手の成長に期待しましょう。

プロフィール


■竹ノ内佳樹(たけのうち・よしき)選手
生年月日 1992年5月25日
所  属 NTTネオメイト ITビジネス本部
出身校 関西大学第一高等学校~日本大学
主な戦績
2013年 第92回関東学生陸上(ハーフマラソン)7位
2017年 第71回福岡国際マラソン7位(日本人3位)
ベスト記録
10000m 28分36秒44
マラソン 2時間10分1秒
■清水康次(しみず・こうじ)監督
生年月日 1969年10月17日
所  属 NTT西日本 人事部
出身校 広島県立西条農業高等学校~大東文化大学
主なマラソン成績
1997年 東京国際マラソン優勝(2時間10分9秒)
2001年 福岡国際マラソン2位(2時間9分28秒)
2002年 山アジア大会2位(2時間17分47秒)
2003年 びわ湖毎日マラソン4位(2時間8分28秒)

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