「とにかく朝10分、ひと駅歩け!」
健康法は実行することが大切。
――老人総合研究所では、不健康な生活習慣の改善を呼びかけるために「元気で長生きの十か条」を発信されていますね。
これまでの研究の分析から、65歳以上の高齢者向けにポイントをまとめたものですが、中年世代にも参考になると思います。 ここで強調しておきたいのは、いかに効果的な健康法であっても、本人がやる気にならないと効果はないということです。なによりも実行が大切。たとえば、運動不足の方はその状況が当たり前になっていて、運動を勧められても、「またか」という感じで聞き入れようとしない。こんな方々には、「とにかく朝10分、ひと駅歩け! それがあなたの寿命を延ばす!」といった強烈なメッセージを送りたいと思います。朝の通勤のとき、電車やバスの次の駅まで歩く。軽く汗をかいてさわやかな気分になる。その程度の軽い運動でも習慣にすることで効果が期待できるのです。
むしろ、ハードな運動はお薦めできません。アメリカのハーヴァード大学の卒業生を長年にわたって追跡した調査では、学生時代に非常に激しい運動をする人は運動不足の人と同様に死亡率が高かったと報告されています。運動もほどほどが良いのです。中高年でマラソンを始め、のめり込む人も少なくないのですが、足腰を痛めない程度に、そして無理をかさねないように注意が必要です。
――日本の平均寿命は国際的にも長いわけですが、その理由をどうお考えですか。
日本の伝統的な食事や生活様式が健康に良いことは確かです。たとえば、日本女性の骨は欧米の女性より密度が低く、背骨での骨折率の高いことが分かっています。にもかかわらず、脚の太ももの付け根の骨折(大腿骨頸部骨折)の発生率では欧米女性の3分の1程度と明らかに低い。これは、座る、しゃがむといった畳の上の生活や朝晩のふとんの上げ下ろしといった習慣により、足腰の筋力やバランス力が長年にわたり自然に鍛えられており、その結果高齢期でも転倒しづらいことが背景にあると考えられます。
ただし、心配なのは、日本の生活スタイルの急速な欧米化です。ふとんの生活からベッドの生活に変わり、眠たくなったらコロッと横になりさえすればよくなりました。床のぞうきんがけ、和式トイレでしゃがむといった頻度も減っている。足腰の筋力を鍛えるチャンスが減りやすい生活環境にあるわけです。
生活の欧米化がよくない、と言うつもりは全くありませんが、楽になった分だけ運動量が減っていることを見過ごしてはいけません。欧米化した生活を送った世代が高齢化したとき、寿命が今よりも短くなる恐れがあります。つまり、今の日本人は意識的によく運動をしなければ、元気に長く生きられないかもしれない。
こうした現実を認識していただければ、中年期のみなさんにも、生活習慣の見直しにもっと積極的に取り組んでいただけるのではないかと思います。




